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PROJECT STORY
白井 優也
Yuya Shirai
海外部
2016年入社
甲斐 裕典
Hironori Kai
エンジニアリング部 品質技術課 課長
1998年入社
井上 和也
Kazunari Inoue
技術部 技術1課
1993年入社
PLOROGUE
台湾・台北市の地下鉄では、ある駅舎の築造にあたり、長年頭を悩ませている課題があった。地下に埋設されている大口径の水道管を移設しないと、駅舎の工事ができないことである。この水道管は台北市と新北市、合わせて約700万人もの人々に水道水を供給する重要な管路で、断水など絶対に許されない。この難工事にコスモ工機が挑むことになった。得意とする不断水工事の技術力とノウハウを結集、現地の施工会社と協力して、断水することなく工事を完遂した。このプロジェクトで躍動した3人の言葉を通して、国境を越えて世界の人々の暮らしに貢献するコスモ工機の姿をレポートする。
Phase 1
2019年6月、エンジニアリング部の甲斐裕典は、10年ごしの苦労を振り返り、感無量の思いで式典に臨んでいた。「ようやく着工だ。よくぞここまでこぎつけたものだ」。テントには菓子や果物が山盛りに供えられ、地下鉄、水道局らの幹部が並んでいる。台湾流の式典終了後、発注者である地下鉄の幹部から、現場責任者を務める甲斐が呼ばれた。「台湾の人のために力を尽くしてください。よろしくお願いします」。甲斐は背筋がピンと伸びる思いでその言葉を聞いた。「感慨に耽っている場合ではない。台湾の人たちの信頼を裏切らないように、必ず成功させよう」と甲斐は心に誓った。
コスモ工機は10年前に台湾で口径600ミリの不断水でのバタフライ弁設置工事を実施した実績がある。その後、小口径の製品を現地の代理店を通じて工事会社に供給してきた。その代理店から海外部の台湾営業担当のもとに、地下鉄駅舎築造工事にまつわる水道管移設の話がもたらされた。「1,650ミリの不断水での大口径の水道管を断水することなく移設したいそうです」。営業担当から相談を受けた甲斐は、すぐに「あの件がいよいよ動き出すのか」と思った。10年前から構想があることは聞いていたのだ。
工事の発注者は地下鉄当局だが、水道管を管理するのは水道局で、工事は入札により台湾のゼネコンが元請けとなっていた。不断水工事を担当するコスモ工機は、台湾のゼネコンのもとに自社の技術と実績をアピールしなければならない。技術部の井上和也も加わり台湾のゼネコンのもとを訪れると、日本の競合他社にも見積りを依頼していると告げられた。そこから甲斐らは1か月以上に渡り、毎週、台湾に飛び説明を繰り返した。 技術力と熱意が評価され、コスモ工機は受注に成功する。だが、一つだけ条件が付いた。実際の製品で事前審査のデモンストレーションを実施すること。審査をクリアできない場合、この案件は白紙になると言い渡された。
Phase 2
デモンストレーションに向けての準備は、技術部の井上が担当した。技術部は不断水工事の現場状況に合わせて、必要な製品を設計する役割がある。 「口径1,650ミリとなると、人間の身長くらいの大きさ。そんなサイズの切換弁の設計は経験がありません。解析ソフトを用いて形状や肉厚等について徹底的にシミュレーションを重ね、慎重に設計を固めていきました」と井上は振り返る。
設計を終えた製品は秋田工場で製造する。井上は秋田工場に出向き、製造部が製作した切換弁の性能試験を繰り返した。船輸送を行う為に軽量化も求められたこともあり、製品強度と止水性能とのバランスを保つことが非常に困難だったが、改良に改良を重ね、1週間がかりでようやく性能試験を終えた。
2019年4月、埼玉県飯能市のCTBCで行われるデモを見学するために、台湾から十数人のお客様が来日した。春だというのに、雪が降っている。台湾の人にとって雪は珍しく、お客様は大はしゃぎだが、井上はその姿を横目で見ながら一人気を揉んでいた。穿孔・挿入とも予定通りの性能を発揮してくれるだろうか。実際の工事は地中で行うが、デモは地上で行う。大型の製品に耐えられるだけの架台も製作、実際に水を流して行うための簡易実流装置も用意し、入念に準備を重ねてきたのだが。
デモ当日、雪こそやんだが、足元にはまだ雪が残っていた。研修中の新入社員も含め、多数の社員が見学に詰めかけている。試験は項目ごとにチェックしていく仕組みだ。張りつめた緊張感の中、一つ、また一つ試験項目がクリアされていく。お客さまの表情が明るく輝いていくのが、井上にははっきりとわかった。
「大丈夫だ、これで責任が果たせた!」
井上は誰にも見つからないように、小さくガッツポーズを決めていた。
Phase 3
次の課題は巨大な製品を現地にどうやって運び込むかである。輸送関係は海外部の白井が担当した。2016年に入社した白井は、当時、海外部での経験がまだ浅く、大口径の製品を海外に移送するのも初めてのこと。運送会社と契約し、製品を横浜港へ陸送、そこから台湾へ船で運び込んだ。
工期が決まっている中で、輸送の期間を考慮することはもちろんの事、海外へ移送する際に必要な書類や費用について、輸送業者を含め何度も打合せを行った。 その中で多々課題や問題はあったが、各部署の協力もあり無事に製品を現地へ届けることが出来た。
不断水切換弁の施工は無事に終えることが出来たが、当案件は駅舎を築造後、既設管へ管路を再度切換える予定となっており、工事全体の完了は2024年を予定している。今後のアフターフォローについても万全を期す。
「営業担当は最後、お金を回収するまで責任があり、技術や施工とはまた別の難しさがあります。海外部に所属する以上、今後も同様の案件が出てくるはずで、今回のことは大変勉強になりました」と白井は話す。
Phase 4
さて、工事は現地の施工会社の協力が必要になる。甲斐と旧知の水道局幹部が、施工会社を紹介してくれた。
「驚くほど優秀な人たちでした。海外では時間を守らない、モノが届かないといったトラブルが日常茶飯事。でもこの案件では、トラブルは1回もありませんでした」(甲斐)
ただ、甲斐が心配したのは、施工管理に携わるコスモ工機の日本人スタッフの健康維持である。約2か月に渡る工事期間中、時折メンバーを入れ替えながら、常時5、6人が日本から派遣され、コンドミニアムに滞在していた。海外での仕事は初めてというメンバーも少なくない。甲斐は以前、工事で東南アジアに滞在した時、体調を崩したことがあり、健康の大切さを身に沁みて知っていた。
工事が始まってほどなく、台湾は雨季に突入、午後になると容赦なくスコールが叩きつけた。不断水工事は雨でも支障なくできるが、関係者の健康状態を考慮し、甲斐は早めに作業を切り上げる指示を出すなど工夫した。こうして工事は2019年7月末に無事完了、台湾の人々から感謝の言葉をいただいた。
その後、海外部の白井のもとには台湾からの引き合いが殺到している。「今後、台湾全土に当社の不断水工事を展開していきたい」と白井は意気込みを語る。
台湾のみならず海外では不断水工事のことを知らない国や自治体がたくさんあり、コスモ工機は世界の人々にまだまだ貢献していくポテンシャルがある。「これからも世界中の人たちに喜んでいただける仕事をしていきたい」とメンバーは異口同音に今後の抱負を語っている。